レーザー波長の種類

Laserの魅力
エコなエネルギーを使い素材に適切な加工を施します。素材の特性を見付け、アイデアと知識で高品質な加工を提供していきます。新しいものづくりに、レーザー加工技術を最大限に発揮していきます。
レーザー加工
レーザー光と素材の関係
レーザー光を素材へ照射すると素材の反応としては、反射及び散乱、吸収、透過する、のどれかに結果が現れる。レーザー加工とはレーザー光を素材へ照射し、素材表面に吸収されることにより始まる。素材への吸収が悪ければ、加工の品質は当然ながら悪い。
あらゆる素材にはそれぞれ特性があり、素材の吸収率も異なる。従って、レーザー加工とは素材に適切な波長のレーザーを選ぶことが重要になります。
そして素材特性の理解度がレーザー加工の重要課題ということになります。

レーザー波長についての豆知識編
目次
1.CO2レーザー
2.YAGレーザー・ファイバーレーザー
3.グリーンレーザー
4.UV(紫外)レーザー
5.DUV(深紫外)レーザー
6.青色ダイオードレーザー(半導体レーザー)
7.主なレーザーの違い

レーザー波長による加工詳細 → 加工ソルーション

1.CO2レーザー(気体)
主に切断加工やマーキング用途で使用されます。レーザー波長は10.6μmの赤外光でレーザーの中では最も長い波長帯です。発振管内には二酸化炭素(CO2)ガス、窒素(N2)、ヘリウム(He)が配合されていて、分子の衝突・振動によりエネルギー交換が行われ、レーザー光が放射されます。
二酸化炭素分子と窒素分子の組合せが良いのでエネルギー効率が高く、またヘリウムがレーザー光の状態を安定して持続させています。
加工の特徴としては、波長が長いので素材に熱をかけて加工する傾向になります。
素材がエネルギーを吸収する時、ビームが当たっている周辺にも熱影響を及ぼします。従って、吸収率が良い素材であっても、周りへの熱影響が出てしまうこともあります。
加工素材としては紙、木、透明なアクリルでも加工に適しています。金属以外では、おおよそ加工可能であり最も広範囲に使用されているレーザーです。

Co2レーザー波長についての補足
Co2レーザー波長領域の中で波長が違うレーザー発振器が数種あります。わずかな波長の違いでも、特定した素材に対しては加工品質に差が生じます。ですが、大まかにCo2レーザーひとくくりで考えて良いと思います。

10.6μm:Co2の中で基本的に多くのレーザー機に使用されている一般的なCo2波長帯レーザーです。近い波長領域で、10.2㎛の波長帯もあります。PP、PEへの吸収率が10.6㎛より良いとされます。

9.3μm:PETなどフィルム素材への熱影響が軽減されます。フィルム素材の加工が主体であれば9.3㎛の波長領域が良いとされます。

CO2レーザーの特徴
・金属にほとんど反応しない。
・素材に熱をかけて加工することが多い。焦げやすい。
・アクリル、ガラス、PETなどの透明な素材に対しても加工可能。
・樹脂PP、PE、ABSに対しては吸収が悪く熱影響を受けやすい。

CO2レーザー発振方式
1.CWレーザー 連続発信動作(continuous wave operation)レーザー出力を連続して発振。
2.パルスレーザー パルス発振動作(pulsed operation)レーザー出力をパルス状に発振。(ON OFFを繰り返す)

レーザービーム制御方法
1.XYプロッタ方式・・・固定された集光レンズをXY方向に駆動させて制御する。
2.  ガルバノスキャナ方式・・・モータの先端に取付けられたミラーを高速に駆動させ制御する。

プロッタとガルバノスキャナレーザー比較
プロッタ
メリット
1.価格が安価な設定からあり初期投資負担が少ない。
2.加工エリア設定のバリエーションが豊富。
3. ビームの入射角が直角で、断面の傾斜が直角に近い。
4.焦点距離が短く、ビームスポット径を絞れる。
デメリット
1.加工スピードが遅い。(ガルバノスキャナと比べて)
2.焦点距離が短く、焦点深度も浅いためレンズを選ぶ必要がある。

ガルバノスキャナ
メリット
1.加工スピードが早い。
2.焦点距離が長く、焦点深度が深い。フォーカスポイントの範囲が広い。
3.パルスレーザーとガルバノスキャナの組合せで、素材への熱影響を最小限に抑えられる。
デメリット
1.初期投資負担が大きい。
2.加工エリアが小さい。(レンズによる)
3.レーザー照射により発生する粉塵処理が難しい。

2.YAGレーザー(Nd:YAG)(固体)
YAG:Y(イットリウム)・A(アルミニウム)・G(ガーネット)と言われる結晶構造をもつ固体で、この結晶にNd(ネオジウムイオン)発光素子をドーピング(添加)し励起状態にします。波長 1064nm
YVOレーザー(Nd:YVO₄)
YVO:Y(イットリウム)・V(バナジウム)・O(オキサイド)または、Y(イットリウム)・VO₄(バナデート)と言われる結晶構造を持つ固体で、この結晶にNd(ネオジウムイオン)発光素子をドーピング(添加)し励起状態にします。波長1064nm

ファイバーレーザー(固体)
ファイバーレーザとは光ファイバを増幅媒体とする固体レーザー。シードレーザーと呼ばれる方法でレーザーを作り出し、ダイオードポンプを通してガラスファイバーで増幅します。波長1064㎚

YAG、YVO₄、ファイバーレーザーの特徴
同じ1064㎚波長でも媒質の違いによりレーザーの特性も違ってきます。
大まかに分類すると
・ファイバーレーザー
・YAG、YVO₄
特徴的には
ファイバー:熱量が多い 長いパルス幅で金属の切断など。
YAG:低い周波数で高いパワー。金属の深掘り、マーキング。
YVO₄:高い周波数でピークパワー高い。短いパルス幅。熱影響少ない。

詳しくは加工ソルーション…ファイバーレーザー、YAGレーザー

3.グリーンレーザー(波長532nm)
基本波長の半分の波長です。第2高調波(532nm)の波長は可視光領域で緑色のため、グリンレーザーと呼ばれます。
加工の特徴
・吸収率が高く、金や銅などの反射率の高い素材への加工が可能。
・ビーム径が絞れるため、より微細加工が可能。

詳しくは加工ソルーション…グリーンレーザー

4.UV(紫外)レーザー( 波長355nm)
基本波長の1/3の波長です。第3高調波(355nm)の波長は紫外線領域のため、UVレーザーと呼ばれます。
各素材に対して吸収率が非常に高く、他の波長に比べると素材への熱影響を抑えられ、高品質を求められる微細加工に適しています。
■UVレーザー加工機
UV(355nm)ピコ秒短パルスレーザー
高品質加工を求めるのであれば、ピコ秒(1兆分の1秒)やフェムト秒(1000兆分の1秒)超短パルスレーザーがあります。設備は非常に高額となり、ランニングコストも高額となります。
加工方法を簡単に説明すると、波長の長いレーザー(Co2レーザー)が熱加工とすると、短パルスレーザーは非熱加工の領域になります。アブレーション加工とも言われています。アブレーション加工とは振動により分子を破壊していくようなイメージです。短パルスによりピークパワーを高め、素材への熱影響を抑えられる為、加工断面は格段に品質が良いです。
レーザー業界では最先端技術のレーザーと言っても良いと思います。
もう少し詳しくは加工ソルーション…UVレーザー

5.DUV(深紫外)レーザー(波長266㎚)
基本波長1064㎚の1/4に当たる領域の波長帯レーザーです。266㎚と非常に短い波長であり、スポット径も10㎛と小さく絞り込むことが可能です。
ただ、設備維持にコストがかかり生産設備というより、研究開発における設備といった方が良いかと思います。
当然ながら波長が短いので、素材への熱影響も抑えられ高品質な加工断面が再現されます。DUVレーザーと同等品質を求めるのであればUVピコ秒レーザーの選択が良いかとも思います。

6.青色ダイオードレーザー(半導体)(波長 445㎚~450㎚)
媒質として半導体に電流を流して発振させます。加工機として青色ダイオードレーザーがあります。半導体レーザー加工機として445㎚波長帯の加工機があります。
半導体レーザーは低電圧、低電流で駆動でき、比較的容易に発振させることが出来ます。出力3W程度の安価なレーザー機があります。


7.主なレーザーの種類
レーザーは固体、気体、液体の3つに大きく分けられます。そして加工の目的により、最適なレーザーを選ぶ必要があります。
固体
YAGレーザー(1064nm) グリーンレーザー(532nm) UVレーザー(355nm) ファイバーレーザー(1064nm)
主な加工用途
金属、樹脂、レーザーラベルへの印字マーキング。超微細加工用途に最適です。

気体
CO2レーザー(10600nm)
主な加工用途
紙、木、アクリル、PETフィルムのカット加工、マーキング加工。


ダイオードレーザー(半導体レーザー)
主な加工用途
紙、木、革製品、アクリル(黒)透明素材は透過してしまい加工不可です。


液体
Dyeレーザー(330〜1300nm)
主な加工用途:理化学用用途

レーザー種類とビームスポット径の関連目安
CO2レーザー 10600nm 約100μm〜約200μm
基本波/IRレーザー 1064nm 約50μm
GN/グリーンレーザー 532nm 約30μm
UVレーザー 355nm 約20μm
DUVレーザー 266㎚ 約10μm

 

投稿日:2017年3月11日 更新日:

Laser職人